石母田正『中世的世界の形成』 ― 2016年02月11日 08:47

この本は日本歴史学界の“伝説的古典”の一冊とされています。戦後古代史学の巨人である石母田正(いしもだしょう)が、太平洋戦争末期の昭和19年7月、たった一か月で書き上げた(岩波文庫版の解説より)というからこれだけでもすごいですが、その時の石母田は数え年で33歳という若さです。現在は岩波文庫版で読めますが、8ポイント活字サイズで本文が420ページあります。
ウィキペディアの解説では実際の執筆時の模様は「戦前に脱稿していたが、戦時中の空襲で自宅と共に原稿は焼失した。しかし、敗戦により今こそ発表すべきと考えた石母田は自宅にこもり、雨戸を閉め切ったまま一夏で再び書き上げたという」という、さらにすさまじい神話が語られています。
岩波文庫版の解説でも石井進氏が(たぶん、こうした研究書の解説としては異例なことなのでしょうが)本書の執筆や発行の経緯について触れ、「(戦災で印刷所が焼け、戦前には出版できず)敗戦後の1946年6月、伊藤書店からはじめて公刊された」と述べています。どうも原稿も焼けていちから書き直したということはないようですが、とにかく最初の執筆の事情は壮絶なものであることがわかります。
読み始める前に、こうした執筆・製作過程に興味がいってしまいましたが、そもそも、なぜこの本を読んでみようと思ったかというと、日本の中世史研究の古典に触れたいという気持ちがないわけではありませんが、それ以上に、著者・石母田正氏のことが知りたかったためです。それは石母田氏がこれもいまや古典的名著である『平家物語』(岩波新書)を書いているからです。平家物語をきちんと読んで記録をつけてやろうと思い始めたのは最近ですが、ここ1年ほどは古典を少し勉強し、かなりきままですが、『今昔物語』などを読んできていました。そしてもういちど『平家物語』にもどって、歴史的事実との照合や成立の背景などを考えながらじっくり読み直してみたいと思ったとき、この石母田正の『平家物語』をあらためて手にとり、その的確な分析と古典文学に対する深い知識や愛情に感動したのです。そして、この名著の作者についても知りたくなったというわけです。石母田正が日本古代史の第一人者ということ程度はなんとなく知っていましたが、「古今未曾有の大学者である。この大学者を超えることは至難の業」(安良城盛昭氏)という言葉が贈られているほどのひとなのです。なまはんかな気持ちでいえる言葉ではありません。
『中世的世界の形成』の内容自体は、伊賀の国・東大寺領荘園の中世から近代にいたる歴史をたどりながら中世武士団の勃興と封建制社会の成立を具体的に解き明かした研究書です。私などのような素人が一貫した興味をもって読み切るのは、難しいというか、能力的にもほとんど不可能です。戦前にこのような研究が行われていたのだからすごいことだと思うばかりです。
ということで、全体について読むだけでも困難なので、論全体の流れからやや離れ、「平家」などの文学にも触れている第4章第2節「中世的世界」だけをできる範囲で考えてみることにします。
ウィキペディアの解説では実際の執筆時の模様は「戦前に脱稿していたが、戦時中の空襲で自宅と共に原稿は焼失した。しかし、敗戦により今こそ発表すべきと考えた石母田は自宅にこもり、雨戸を閉め切ったまま一夏で再び書き上げたという」という、さらにすさまじい神話が語られています。
岩波文庫版の解説でも石井進氏が(たぶん、こうした研究書の解説としては異例なことなのでしょうが)本書の執筆や発行の経緯について触れ、「(戦災で印刷所が焼け、戦前には出版できず)敗戦後の1946年6月、伊藤書店からはじめて公刊された」と述べています。どうも原稿も焼けていちから書き直したということはないようですが、とにかく最初の執筆の事情は壮絶なものであることがわかります。
読み始める前に、こうした執筆・製作過程に興味がいってしまいましたが、そもそも、なぜこの本を読んでみようと思ったかというと、日本の中世史研究の古典に触れたいという気持ちがないわけではありませんが、それ以上に、著者・石母田正氏のことが知りたかったためです。それは石母田氏がこれもいまや古典的名著である『平家物語』(岩波新書)を書いているからです。平家物語をきちんと読んで記録をつけてやろうと思い始めたのは最近ですが、ここ1年ほどは古典を少し勉強し、かなりきままですが、『今昔物語』などを読んできていました。そしてもういちど『平家物語』にもどって、歴史的事実との照合や成立の背景などを考えながらじっくり読み直してみたいと思ったとき、この石母田正の『平家物語』をあらためて手にとり、その的確な分析と古典文学に対する深い知識や愛情に感動したのです。そして、この名著の作者についても知りたくなったというわけです。石母田正が日本古代史の第一人者ということ程度はなんとなく知っていましたが、「古今未曾有の大学者である。この大学者を超えることは至難の業」(安良城盛昭氏)という言葉が贈られているほどのひとなのです。なまはんかな気持ちでいえる言葉ではありません。
『中世的世界の形成』の内容自体は、伊賀の国・東大寺領荘園の中世から近代にいたる歴史をたどりながら中世武士団の勃興と封建制社会の成立を具体的に解き明かした研究書です。私などのような素人が一貫した興味をもって読み切るのは、難しいというか、能力的にもほとんど不可能です。戦前にこのような研究が行われていたのだからすごいことだと思うばかりです。
ということで、全体について読むだけでも困難なので、論全体の流れからやや離れ、「平家」などの文学にも触れている第4章第2節「中世的世界」だけをできる範囲で考えてみることにします。
コメント
_ manicure ― 2017年05月04日 13:59
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