氷河期の動物と人間 ― 2025年08月10日 19:18
上の写真はネアンデルタール人、下はクロマニヨン人です。まるで今にも動き出しそうなリアルな様子をしていますが、約4万年前の氷河期とよばれる時代に、現在のヨーロッパ地域で生存していた人類の仲間の代表です。クロマニヨン人はその後、現在の我々人類=ホモサピエンスに繋がっていきます。ネアンデルタール人は今は生存していないので化石人類とよばれることもあります。このあたりの生物学的な分類は難しいですが、ともかく、かつての氷河期に2つの代表的な人類が、そのほかの大型の生物とともに生存していたこと、そして2万年前以降の氷河期後の暖かい世界には、大型の生物とともにネアンデルタール人は滅び、新しい人類の歴史の時代が始まっていきます。
日本では、氷河期というときにネアンデルタール人のことはあまり話題になりません。しかし、氷河期の大型生物のうちで北海道地域にまで生息したとされる象の仲間「マンモス」はその独特の姿から人気があり、その後、石器時代人と共存していたと思われるナウマンゾウも歴史の教科書でおなじみの動物です。これも氷河期のことなのか。そもそも氷河期とは何なのか。地球温暖化がさけばれていますが、それと関係あるのかないのか。猛暑が続くこの夏休みに、そうした疑問を小学生にも分かるように展示しようと開かれたのが東京・上野の国立科学博物館での「氷河期展」です。展示会には「人類が見た4万年前の世界」というサブタイトルがついています。つまり、この時代には人類が生存していて、その中を生き抜いていたことを示しています。上の2つは、この時代の代表的な人類を化石から再現した生体復元模型(Biological restoration model)ということになります。
地球の歴史の中でなぜ氷河期とよばれる寒冷気候が定期的に訪れるのか。数億年の地球の歴史の中では逆にかなり温暖化した時期もあり、植物が繁茂し、恐竜などの大型動物が栄えた時期もあります。これには、地球の自転や公転さらに地軸の傾きや火山活動にかかわる複雑な要素があるようですが、現在の10年、100年単位の気候変動などとは違うスケールがあるらしいです。現在の地球温暖化も40~50年くらい前には「氷河期が終わったあとの自然な温暖化現象だ」という説明をする学者もかなりいたと思います。その後、人間の出すCO2の量がとてつもなく多くなってきて、そんなのんきな説をいう人はいなくなってしまいました。
しかし、科学の話は難しい。氷河期などという面白そうなテーマであっても、そのメカニズムや人類の進化や系統に関する説明となると数字やグラフが登場するので、子供どころか付き添いの大人でさえ素通りするだけが多いです。そこで、なんといっても(子供はもちろん大人でも)注目する大型の動物の化石や再現ジオラマそして生体復元模型の登場です。今回の展示は①氷河期ヨーロッパの動物②ネアンデルタール人とクロマニヨン人③氷河期の日本列島―の3つの部屋にわかれていますが、どれも展示の中心は写真のような、眼をひくこうした動物たちです。②の部屋でのネアンデルタール人とクロマニヨン人の頭骨化石も、確かに日本初登場という触れ込みで展示されていますが、何となくというかかなり地味であるのは仕方がありません。
ところで、約10万年というサイクルで繰り返しやってくるというこの地球の氷河期の中で、最後の氷河期のさらに最寒冷時期は約2万年前ということになっています。まさにそれが終わり温暖化し始めた時期が人類の本格的活躍の始まりに重なるというのは、なんとも皮肉なことで、つまり温暖化が人間に文明をもたらしたらしいのです。その文明が今度は地球の自然サイクルを狂わせてしまうほどの変化を地球に与えているのは間違いないようです。
また、この時期に多くの大型動物や(もしかしたらネアンデルタール人の)滅亡には現生人類による狩猟や戦いが関係していることも事実のようです。
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