越生のクスの巨木 ― 2024年09月22日 11:15
埼玉県中部にある越生(おごせ)町は、越生梅林があり、埼玉県では「梅の里」として有名です。秩父方面・寄居に向かう旧街道沿いは宿場町の様相ですが、少し離れると越辺川がゆったりと流れる中に林や果樹園、畑が広がる自然豊かな山里になります。ハイカーであれば飯能・吾野方面から高山不動尊や北向き地蔵、黒山三滝をへて生越に至るというルートはよく知られています。ここからは、秩父方面に行くにも飯能方面に行くにも山並みを越えていくので「尾根越し(おねごし)」が「尾越し(おごし)」となり、それがやがて「おごせ」と変化して地名になった言われていることがよく分かる地形です。
黒山三滝などを訪れる登山者は、ほとんど越生の平野部は通過してしまい、梅園に来る観光客は梅の花が目的ですから、町の北西部分の山里に注目する人は少ないようですが、ときがわ町との間に広がる丘陵地には名高い古刹がいくつもあり、道沿いには馬頭観音や素朴な観音様などの石仏が置かれ、そしてその豊かな自然の中には県内でも有数の「巨木」が隠れています。
ということで、越生町の観光案内にもPRされている巨樹の中で上谷(かみやつ)の大クスの木を見ようという企画を進めていて、まだ暑さの残る中、歩いてきました。大クスの他に、越生梅林内にある梅の巨木である「塊雪(かいせつ)」も見るつもりでしたが、都合により行けず、龍ケ谷にあるというヤマザクラも次の機会にいくことにします。
この大クスは、越辺川に面した建康寺という古いお寺(太田道灌の父である道真、退隠の地だそうです)近くの支流がつくる谷沿いの道を30分~40分ほど登った中腹にあります。支流とはいえ砂防ダムがあり水量はかなり豊かです。樹林の中をゆっくり坂道を登ります。付近はほとんどスギの人工林ですが、川はきれいな渓流です。
目指す大クスの巨木の前には家があり、庭に大量のマキが積まれていました。「大クス山」という地名表記がされていますが、この山自体が個人の所有ということでしょうか。一帯は、古くから豊富な山林資源を活かした山の生活で、このクスノキはその中で象徴の場所だったのでしょう。かなり古く100年以上前の1922年(大正11年)に埼玉県指定の天然記念物になっています。
大クスの周りは観光用?なのか、切り開かれていています。幹の周囲には歩いて近づくための木製のデッキが造られていますので、危険な思いをせずに、幹にかなり接近して観察できます。幹の隣に人間が立つと、そのスケールがわかります。地上から5メートルくらいまでは巨大な幹に根を下した植物や寄生植物やらで小宇宙状態です。幹周り15メートル、高さ30メートル、樹齢は1000年以上と推定されていて、 昭和の「緑の国勢調査」で、全国巨木ランキング第16位、埼玉県では第1位に認定されました。
クスノキは南方性で、南西日本に多い樹木なのでこれほどの巨樹は北部関東では珍しいようです。私が今まで見た中で一番の巨木はこれもクスノキで熱海の木宮神社のご神木です。この大クスは、幹の胴回り約23.9メートルで「本州で1番大きい」といわれていますが、熱海は静岡県(中部地方)ですから、わが郷土の生越の大クスが県内で1位どころか「関東1位」であることに間違いはなく「東日本1位」も嘘大ではありません。
ちなみに、クスノキは巨木になりやすく、日本最大のクスノキは、鹿児島県蒲生八幡神社の「蒲生の大楠」(幹周24.2メートル)で、確認されている中で、幹周の上では全樹種を通じて日本最大の巨木だそうです(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia))。
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