富士塚と新河岸川舟運2019年05月14日 14:00


埼玉県立歴史と民俗の博物館友の会のまち歩き研究会、今回は県・西南部にある志木市の「富士塚と新河岸川舟運の遺構」を中心としたまち歩きになりました。午前10時、東武東上線の志木駅に25名が集合、無風快晴、まことに上天気になりました。テーマが多いため、今回は地元の「志木のまち案内人の会」の方々(6名)にご同行いただき、懇切な説明をいただきました。感謝です。

志木駅前からさっそく解説がはじまります。駅横を通る志木街道が、昨年行った「野火止用水路と平林寺」の続きとなる用水の流路となり、暗渠化して地下を通っているのです。この用水が新河岸川を越え、宗岡と呼ばれる水田地帯にまで到達しているのは志木の繁栄のひとつのカギです。

 野火止用水路と水車、市場通り

この街道を歩くと、推定地1カ所を含む3つの水車場跡が確認できます。野火止用水路は産業の振興にも役立っていたわけです。やがて、街道は「市場」と呼ばれる、かつての新河岸川の河岸場近くの通りに出ます。両側には往年の繁栄の跡を残す蔵造りの大店も残す独特な商店街になります。そこに「富士道」という横丁が出てきます。これが富士塚に至る参詣道のようです。進んでいくと石の鳥居の向こうに大きな山が見えてきます。近づくと緑の草木の間に巨石、巨岩が配置されています。これが田子山富士塚で、隣にある社殿よりも目立つのは、この富士塚は合祀で探勝した敷島神社より古くから存在しているためのようです。

 立派な富士塚に感動

 ここから富士塚の解説になりますが、ここの保存会は、山開きやお正月はもちろん、毎月の暦に合わせて会員が常駐して、解説を行っているということです(たぶん数ある保存会の中でももっとも活発な活動をしていると思います)。この日も深瀬保存会会長はじ、メンバーが参加者25名を3つのグループに分けて、その歴史と塚のいたるところにちりばめられた石碑などの文化遺産を案内してくれました。中でも注目すべきは、麓の浅間神社下社に祭られているご神体の板碑。これは、富士塚の造営(明治4年)に先立つ、暦応3年(1340)、つまり中世期の富士信仰の記録を残す逆修の板碑なのです。ここに富士塚以前から「田子山」という塚が存在していたという記録は、富士塚の形成史の上でもきわめて重要なことです。この富士塚が埼玉県指定の文化財になっているのも、保存状態の良好さとともに、この意義が評価されたものとされています。ここで集合写真をとりましたが、一部画像に汚れがあり、修正しました。結構きれいにできています(上)。

 頂上から雪の富士山が見えた!

説明後、3つにわかれたグループは保存会のご厚意により、山頂に登り、浅間神社を遥拝することができました。ここで、この日の好天気が幸いし、南西の方向に、雪をいただいた富士山を眺めることができました。実際に頂上から富士山を仰ぐことも富士塚の大切な構成要件なのです。

無事に下山後、御胎内なども見学させていただき、再び市場大通りへ。ここで明治のままの風格ある商店や門などを見学、さらに、野火止用水が新河岸川を越える際の水道施設である「いろは樋」の木製の桝や樋の模型展示(ポケットパーク)や明治のレンガ造りの遺跡などを見学したあと、新河岸川沿いの小公園で、この志木の青梅や八王子付近の荷も運んで栄えたというこの引又河岸と舟運の盛衰を聞きながら休憩と昼食。

午後も、志木の歴史は続きます。まずは、三代の堤防。これは、昭和の堤防、最新の平成の堤防、そして江戸時代に宗岡村を囲んだ江戸時代の3つの堤防が並んでみられる場所です。特に江戸時代の堤防が現在も生活道路路して使われながらほぼ完全に残っているのは貴重な文化遺産ともいえるものです。この江戸時代の堤防を歩きながら、明治につくられたレンガ造りの「北美圦樋」(市の文化財)や水害に備えて敷地内の微高地に建てた水塚とよばれる水防施設が残されている民家の見学など、興味深い散策を続けました。

最後に、荒川の堤防に近い羽根倉の浅間神社内に造られている富士塚「羽根倉富士岳」を見学しました。この富士塚は治水対策やバイパス工事で2回の移転を余儀なくされていますが、立派に再建されてて、これも地元の方々の熱意を感じることができます。

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