春日部の円空仏2019年05月06日 11:20

円空というのは江戸時代初期の修行僧です。日本各地を廻りながら、手彫りの仏神像を制作したことで知られています。いわゆる円空仏です。仏像は京都や奈良に圧倒的に多いのですが、この円空仏は中部から関東・東北にそのほとんどが存在することでも特異な仏像群といえます。その数は、10万以上ともいわれますが、現在確認されているのは5300躯ほどのようです。多くは出生地の岐阜県や愛知県などで数千以上、その次が埼玉県というのですが、数はかなり下がって170躯ほど、寺院に限らず地域の豪農などでも発見がされるため、総数については現在も確認が続いているようです。

埼玉県にも多いといいましたが、そのほとんどは日光街道に沿った地域で、このことは円空が日光に参拝するために、この地を訪れたことを示しているとは多くの研究者が指摘しています。5月3日から6日まで、日光街道の宿場町だった春日部市の観音院という古刹でこの円空仏の展示―いわゆる御開帳が行われるということで、好天の4日、同好の仲間と一緒にこのお寺を訪問しました。

この付近は江戸時代初期に不動院という本山派修験の中心のひとつがあったようで、円空はそこに滞在していたのかもしれません。経緯は不明ですが、この不動院関連の観音院には現在7躯の円空仏が安置され、すべてが埼玉県指定の文化財に登録されています。通常は保安上の理由から県立博物館に寄託されていますが、この時期に里帰りして、多くの人に公開されることになっています。

東武線の北春日部という静かな駅から約15分、古利根川のゆるやかな流れを越えたところにある観音院は、檀家のない寺ということで地元の方々の力に支えられているとのことですが、この御開帳も有志による実行委員会が行っています。かつての繁栄を思わせるような二階建ての壮麗な山門が出迎えてくれますが、仁王像は破損が目立ちます。山門からすぐこれも古い本堂があります。お目当ての円空仏はこの本堂に、こちらを向いて安置されています。7躯のうち、4躯は数十センチの小さなサイズの神仏です。うち1躯は役行者像ですが、修験道の聖地ですから、これも神様になっているのです。

そして本堂正面に大きな3躯。左から不動明王立像、聖観音菩薩立像、毘沙門天立像とすべて立像で、私たち拝観者は座りながら横に移動して拝見します。暗い本堂の中で、かなりの迫力で浮かび上がっています。木造なのですが、玉石のように、赤見を帯びた表面が、輝いて見えるわけではありませんが、暗い本堂の奥で大きく見えるのが不思議です。