色川大吉先生のこと2021年09月12日 17:44

歴史家の色川大吉氏が逝去されました。色川先生のことについてはこのブログの中で五日市憲法に関連して記事を書いています(https://mylongwalk.asablo.jp/blog/2016/11/08/8244461)。古い土蔵の中でむなしく朽ち果てかけていたこの明治初期の市民による憲法草案を発見し、民衆史の中の大きな成果として世に出る活動を行ったのが多摩地域の自由民権運動の研究を進めていた東京経済大学の色川大吉先生でした。

色川先生については、今から10年以上前の2010年12月に「色川先生最後(?)の講演」と題して、以下のような原稿を同窓会誌に書いていました。先生は当時85歳でしたが、まだまだ元気な様子が分かります。それから11年、96歳で逝去されたわけです。

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今から45年も前、『日本の歴史』というシリーズが中央公論社から刊行されました。当時、中学生だった私はなんとこの第1巻を購入したのですが、あとが続かず、歴史には関心をもっただけで終わっていました。その10数年後、文庫版として再登場したときに全巻を通勤電車の中で読んだことを思い出します。「小説より面白い」といわれるこの歴史書は今でも最良の日本通史として読まれ続けていますが、この中の第21巻『近代国家の出発』の執筆者が色川大吉先生です。

ただし、私は、東京経済大学教授だった先生に教えを受けたわけでもなく、当時は、中に書かれていた「秩父事件」などにも特別関心を持ったわけではありませんでした。 その後、40歳代後半になって、仕事の関係もあって、自費出版文化賞というイベントの立ち上げに参加したとき、色川先生にはじめてお目にかかりりました。色川先生は明治時代を中心とする近代史の研究者・歴史家ですが、また、1975年に発表した『ある昭和史』で、それまでの歴史記述のなかにまったくなかった「個人」という視点を持ち込んだことで知られていて、自分史の提唱者ということになっています。八王子の自分史活動で色川先生とご縁のある方がいて、この文化賞の創設時から審査委員長になっていただいたのです。

お目にかかるのは年1回程度ですが、その博識と話術、座をまとめる統率力にはいつも感心するばかりで、来年で14回目です。 先生は70歳で大学を引退後、10数年前から山梨県八ヶ岳山麓で著述の日々をおくっていますが、80歳を間近にして書き始めていた「自分史」4部作の最終編『昭和へのレクイエム』(岩波書店)をこのほど出版しました。先日、この本の出版記念もあって講演会が開催されたのですが、先生自身「これが最後の講演だ」と述べられたということで、多くの参加者が集まることになり、私など門外漢も参加をしました。

会場にいると先生がいつものように軽い足取りで駅から上がってきました。10年前から茶髪です! 地元では「茶髪のおじいさん」で通るとのこと。今回の記念講演のタイトルは「昭和から平成へ─世界史の大きな流れのなかで」。「サインをしていて疲れちゃった。あまり話せませんよ」といいながら、現在の山荘でのユニークな一人暮らしをユーモラスに語ったあと、変わりのない話術で、1989年から2009年までの20年間の平成の歴史的事件と世相風俗を元に、時に辛辣、時にあたたかく、「歴史の変換の時代」を語り尽くしました。最後に語った言葉はこういうものでした。「(日本は)資産を有効に生かしていけば、充実した、幸福な生活をおくれる国になります。現在はそのための変化にあわせた成長戦略を決める岐路なのです」 第2部の出版パーティでは、「平成の時代の記録も書くつもりがあるから90歳まではなんとかがんばりたい」と意気軒昂な様子で、大きな拍手をあびました。

色川先生は、現在一人暮らしですが、料理も家事も全部やり、冬は毎日スキーをするというのですから、かなりのスーパーマンです。「耳も目も悪い。ただ、頭だけはまだ大丈夫」とおっしゃっていましたが、身体(特に感覚器官)は老化しますが、頭脳は「うまく使っていれば」衰えないのです。適度な運動と頭脳の活性化──色川先生の例でもわかるように、これが高齢化時代を生き抜く秘訣のようです。

(上の写真はその講演の時のもの。前列中央に色川先生、後列には私もいます)

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