ちょっと仕事の話2021年08月09日 18:32

今回はちょっと仕事の話。長らくやってきたシステム開発の業務ですが、最近は、新しい領域の開発がなくなってきたこともあって、あまり苦労するような技術的な困難さはなくなってきています。その反面、これまで長年、維持管理してきたシステムの継続的な運営方法が大きな課題になってきています。これは当初からあったテーマですが、要するに人材の経年劣化みたいなもので、2つの面があり、ひとつはシステムの内容を理解している人間がほとんどいないこと、もうひとつは稼働しているあるいは基盤としているソフトウェアやDBシステムの今後の長期的な利用可能性です。

どちらとも本来は私ではなく、私がかかわってきた企業の経営者が考えるべき問題です。こちらは最終的には開発委託業者(あるいは運営委託者)としての守備範囲以上の責任はとりようがなく、またとる必要もないわけですが、いずれも30年近くのつきあいのある企業ですし、やれるところまでやるつもりではあります。

相手側の社内の人事にまで関係する最初の問題は別にして、2番目のソフトやシステムの長期的な運用可能性については、私なりの考えがあり、それを現時点での結論として記録しておきたい考えます。

■10年使える社内システムにする

われわれに関係のあるコンピュータの世界では今年に入ってwindows11の発表やクラウド版のOSなどが話題です。あと数年もするとパソコンの世界も自分のPCに個別のソフトをインストールして使うという形が失われていくかもしれません。ソフトというのはインストールしてから年数を重ねても(ソフト自体は)劣化することはありませんが、OSのアップデートやセキュリティの問題で新しいPCへの導入や使用が難しくなることがあります。

ここで、私には当面の課題として、クラウドソフトを使うなど未来技術はさておき、この先5年から10年くらいの範囲で、また極力設備投資をしないで安定して現状の社内システムを使い続けられる環境を作り上げておく必要がでてきます。責任といってもいいかもしれません。そこで、現状のシステムでの問題と当面の対応を以下にメモしておきます。

■OSは現状の移行を受け入れる

各社により違いますが、システムの現状は主に

・OS=windowsが基本 バージョンは7,8、10と様々ですが、新規増設PCはwindows10、来年以降はwindows11になっていくでしょう。
・LAN環境=windows(windows serverによる管理と単純なwindowsネットワークがある)
・使用ソフト(クライアントマシン)=現状は、Access2010による開発、Access2010ランタイムソフトによるユーザー単位の利用、日本語データベースシステム桐の利用。
・使用DBMS=Microsoft「SQLSERVER 2008R2 EXPRESS版」

ここでわざわざAccess2010による開発としているのは、ADP形式での作業になっているためです。専門的ですが、ADP形式とはSQL ServerなどDBMSにMS-Accessから高速接続ができるファイル形式で、その上、埋め込んだVBAプログラム上でSQLコマンドが完全な形で使えるということで本格的なシステム開発には欠かせなものです。これが、Access2013以降のバージョンからサポートされなくなりました。これはMS社の戦略上の問題でしょうが、じつはこういう「背信行為」はこの世界ではけっこうあることのようで文句をいってもはじまりません。そこで対応を考えます。

■キュリティ対策も十分

ます、ユーザー側での今後の対処ですが、Access2010ランタイム版はwindows10までは問題なくインストールでき、今度出るとされるwindows11もカーネル(基本構造)が10と同じとされていますから、インストールや利用は問題なくできるはずです。少なくとも向こう5~8年程度はこのOSが使用されると思われます。開発もAccess2010があればよいので不便はありません。よく言われるセキュリティ問題ですが、OS自体は10から11と正規にバージョンアップしていきますので特に問題なしです。よくいわれるのがOFFICEソフト自体のセキュリティですが、これについてはDBソフトでありMS-Accesについは対応策が内蔵されています。

例えば作成者不明のmdbやaccdbさらにadp形式のファイルが送られてきた場合、確かにウィルスの心配がありますが、これについてはAccesが基本機能として、こうしたマクロを内蔵できるファイルの実行時には「警告メッセージ」がでるようになっています。ランタイム版の場合、この「警告メッセージ」を出さないという設定はできません。この場合通常利用で「警告メッセージ」を出さないためにはレジストリで設定した「特定のフォルダ」に該当のファイルを置くようにするしかありません。これは外部から知ることはできません。

DBMSも、ADPでは「SQLSERVER2012」までしか対応しないのですが、1世代前の現在の2008R2でも機能にまったく問題はなく、2012へのバージョンアップを考慮すればいいでしょう。実際、このバージョンのSQLSERVER_EXPRESS版で何か能力不足や問題があった経験はありません。またこうした基幹システムではやや古いバージョンを利用することが一般的です。

もうひとつの主要ソフトである「桐」については、windows10以降もインストール可能なバージョン(10S)が発売されており、互換性も問題ありません。というか、「桐8」とまったく同じ操作性です。開発元の管理工学研究所も健在なので今後の不安もほぼありません。ちなみに桐からはODBCを介してSQLSERVERなどのDBMSに接続します。

(上の写真は本文と関係ありません。よく散歩する丘の上にあった涼し気な広場の木々が根こそぎ切られていました。いずれマンションかアパートになるのでしょう。100年以上は経っていたと思われるクヌギかコナラの木でしょうか。切り株が痛々しいです)

鳥海山・月山から立山三山に2021年08月26日 13:47


予定では今月の末、3日あるいは4日の予定で山形・秋田の鳥海山と月山に行くことにしていました。実は昨年の夏にもほぼ同じコースで計画を立て6人くらいの人数で挑戦するはずだったのですが、梅雨明けが遅く、8月の初めのこのあは計画は中止となりました。

ただ、昨年は鳥海山の頂上小屋(御室小屋)がコロナ感染の関係で閉鎖されていたため、私は1日での鳥海山往復を諦めて、その代わりに羽黒山と羽黒古道歩きを考えていました。今年は頂上小屋も再開しましたので、はりきって予約もとっていたのですが、残念ながら今年も中止になりました。

理由はご存じのように「コロナ感染」ですが、今年は埼玉県に緊急事態という(言葉だけきくとまことに大変です)行政上の警告が発表され、多くの良識的な市民がその活動を自粛することになったため、われわれの計画もまたまた流れてしまったというわけです。なにせ若くない身、1年間の延期はこたえます。

ひとつの希望は、この緊急事態が9月上旬には終わるだろうということです。鳥海山小屋は9月上旬で終わりですので、ここは無理なのですが、それとは別に9月末に富山の立山三山縦走の計画が浮かんできました。立山は日本有数の霊山であり、ここに行くことも私の念願のひとつでした。

実は、立山登山の中心地である室堂平までは<立山黒部アルペンルート>の観光旅行で行ったことがあります。短時間でしたが高山植物などのガイドを受けながら付近を散策したことも覚えています。その頃はまだ登山など考えていなかったのですが、白く輝く立山の峰々には登山者の姿も遠く見えました。とりあえず楽しみです。

(上の写真は『立山曼荼羅』と呼ばれる絵図です。江戸時代を中心に、この立山の信仰登山を広く広めるために麓に暮らす人々が使用していました。三山を中央に地獄と極楽がビジュアルに描かれています。富山[立山博物館]には、この絵図(最古の曼荼羅)のレプリカなどが展示されているようで、登山の後、時間をとって訪ねたいと思っています)

涼しい話題―日本の氷河2021年08月27日 13:36


厳しい残暑の中、涼しい話題をひとつ。

その昔の自然地理学では「現在の日本には氷河地形はあるが氷河は存在しない」と教えられました。これは最近まで正しかったのですが、つい最近(2012年)、立山連峰の3か所の雪渓が氷河であることが確認され、けっこう大きなニュースになりました。
(上は、剱岳の三ノ窓氷河(左)と小窓氷河(右))

氷河は、いわゆる万年雪=夏も残る雪渓と外見上はまったく同じなのですが、その最深部にある氷床がごくゆっくりとながら下流に移動していることが条件になります。以前から推測はされていたようですが、規模が小さいこともあって実際に確かめる方法がありませんでした。2009年ころから富山県の立山カルデラ砂防博物館の研究者がGPSなど最新の機器を使って研究を行い、数年間にわたる継続調査で確定し、学会に発表したものです。

最初に確認されたのは、立山連峰の主峰のひとつである劔岳の東方斜面にある三ノ窓雪渓、小窓雪渓とこれも立山三山の主峰である雄山東方の御前山雪渓です。それぞれ、20m以上の冬の積雪の下に、厚さ30m以上の氷体(氷河本体)が確認されました。特に三ノ窓雪渓の氷体は、最大厚さが60m以上で長さも1kmを超えるということでかなりの規模でした。氷河の移動速度はひと月に20~30センチというものですから、この厚い氷河の底の位置を正確に計測する方法がなかったのでしょう。

その後も富山県や、これに負けじと長野県も調査を行い、現在までに全部で7つの氷河が確認されています。すべて飛騨山脈(北アルプス)北部にありますが、立山連峰には5つの氷河が集中しています。この発見により、極東地域の氷河の南限がカムチャツカ半島から立山まで大きく南下することになり、世界的に見れば最も温暖な地域に存在する氷河としても注目されています。これは今も隆起を続けている急峻な地形と日本海からの水分を含んだ豪雪のもたらした自然の結果だと思われます。以下がその氷河です。

 剱岳東面の三ノ窓氷河
 同 小窓氷河
 同 池ノ谷氷河
 雄山東面の御前沢(ごぜんざわ)氷河
 真砂岳東面の内蔵助(くらのすけ)氷河
 鹿島槍ケ岳のカクネ里氷河
 唐松岳の唐松沢氷河

このうち、立山三山縦走では御前沢氷河と内蔵助氷河が見られ、内蔵助氷河には降りることもできます。御前沢氷河のある雄山の反対側には日本で初めて氷河地形が発見された山崎カール(天然記念物指定)もあります。すごいです。

自然は地道府県などを選びませんが、地元にとっては、特に観光面でのPR要素としての価値は大きいものでしょう。県境にある鹿島槍ケ岳や唐松岳の調査は長野県が行い、唐松沢氷河は2019年に確認されたものです。これからも新しい氷河が発見されるかもしれません。

参考:富山県ホームページ(https://www.pref.toyama.jp/1711/kurashi/seikatsu/seikatsueisei/yuki/tateyama/tateyama_hyouga.html

『500マイル』の旅(1)2021年08月30日 10:13


アメリカのフォークソング『500マイル』を知っているひとは多いでしょう。われわれの世代であれば、ぼぼ全員が、人生のいつかどこかでこの曲を聞き、なかでも「 a hundred miles, a hundred miles」と繰り返される単調でありながら旅情を感じさせる歌詞部分とメロディを口ずさめると思います。多分、ここには時代と地域を超えた感情が流れています。私が聞いたのは1970年代のピーター・ポール&マリーのレコードではないかと思いますが、それ以来、現在まで歌い継がれ、様々な映画やテレビ作品でも使用され続けている名曲です。

最近、偶然のことですが、この曲を聞いてみたくなり、例によって「YouTube」で検索してみると、いくつかの音源とともに、この曲の成立の過程が意外に面白ことがわかりました。現在聞いている曲(『500 Miles (Away from Home)』(日本語では:500マイルも離れて)は、アメリカの女性フォークソング歌手ヘディ・ウエストが1960年頃に作曲した楽曲で、その歌詞(ピーター・ポール&マリー(PP&M)版)は次のようになっています。

https://m.youtube.com/watch?v=znLGPp2LabU

If you miss the train I'm on
You will know that I am gone
You can hear the whistle blow a hundred miles

A hundred miles, a hundred miles
A hundred miles, a hundred miles
You can hear the whistle blow a hundred miles

Lord, I'm one, Lord, I'm two
Lord, I'm three, Lord, I'm four
Lord, I'm five hundred miles away from home

Five hundred miles, five hundred miles
Five hundred miles, five hundred miles
Lord, I'm five hundred miles away from home

Not a shirt on my back
Not a penny to my name
Lord, I can't go back home this a-way

This a-way, this a-way
this a-way, this a-way
Lord, I can't go back home this a-way


(訳)

 僕の乗った汽車をもし君が逃したら
 僕は行ってしまったと君は知るのさ
 100マイル先から汽笛が聞こえるだろう

 主よ 100マイル 主よ 200マイル
 主よ 300マイル 主よ 400マイル
 主よ 500マイルも故郷から離れてしまった

 500マイル 500マイル
 500マイル 500マイル
 主よ 500マイルも故郷から離れてしまった

 僕の乗った汽車を
 もし君が逃したら
 僕は行ってしまったと
 君は知るのさ
 100マイル先から
 汽笛が聞こえるだろう

 100マイル 100マイル
 100マイル 100マイル
 100マイル先から
 汽笛が聞こえるだろう

 着替えもなく
 一文無しで
 主よ こんな有り様では
 故郷に帰れない
 

この曲には日本のミュージシャン、忌野清志郎による日本語訳があります。

次の汽車が 駅に着いたら
この街を離れ 遠く
500マイルの 見知らぬ街へ
僕は出て行く 500マイル

ひとつ ふたつ みっつ よっつ
思い出数えて 500マイル
優しい人よ 愛しい友よ
懐かしい家よ さようなら

意訳の感じが強いですが、2番の歌詞もこうなっています。

汽車の窓に 映った夢よ
帰りたい心 抑えて
抑えて 抑えて 抑えて 抑えて

悲しくなるのを 抑えて
次の汽車が 駅に着いたら
この街を離れ 500マイル

やや宗教色のある原曲に対して、青春時代の故郷からの旅立ちの寂しさというイメージに変えていますが、これは日本人の感性に合うようにした改変ですから、悪い歌詞ではないと思います。以下で聞けます。

https://www.youtube.com/watch?v=K02Lh6RUjT8

最初に、この歌には「時代と地域を超えた思いがあると書きましたが、理由がありそうです。まず、この楽曲には元歌があるようです。原曲というより、こうした感じの純粋のフォークソングがいくつかあって、それをもとに先のヘディ・ウエストが作りあげたという流れのようです。

この曲の成立過程を調べていると、まるでアメリカの19世紀の西部開拓時代に遡り、大陸を横断する蒸気機関車の遠い汽笛を聞いているような気持ちになります。

(参考:世界の民謡・童謡 http://www.worldfolksong.com/index.html

上の写真は内容と関係ありません。2年程前に長崎を旅行した時のもの。左の大浦湾にはカブトガニが棲息するらしい。