多摩川の残丘―浅間山2021年04月23日 14:14


都下の府中に用事があって出かけましたが、そのあと、前から気になっていたすぐ近くの浅間山にいってみました。「あさまやま」でなく「せんげんやま」と呼ぶ浅間山は全国にありますが、この府中にある浅間山は、その位置が多摩川沿いということでも分かるように、いわゆる河岸段丘です。地質的には多摩丘陵と同じ三浦層群からなり、その上に御殿峠礫層、関東ローム層が重なり、古多摩川の残丘(浸食丘)と考えられているそうです。標高も80メートル足らずの丘といっていいほどなのですが、実際に登ると分かりますが、3つの山頂部からなっている立派な「山」です。山域全体はほぼコナラ、クヌギ、イヌシデなどの武蔵野の代表的な木々を中心とした雑木林に覆われ、関東の人間には親しい植物相です。気温が高い今年の春、木々の生育は順調で山中はすでに夏の雰囲気。薫風に吹かれながら縦横に造られた登山道?を歩くとちょったしたハイキング気分が楽しめます。

この浅間山を主体とした公園全体の面積は8万平方メートル以上あり、付近の平地から30メートル以上高い山域がほぼ自然状態で保存されているので多摩地域でも非常に貴重な緑地になっていると思われます。また、武蔵野霊園や野川公園などとも隣接しているので野鳥なども多いようです。植物ではムサシノキスゲという、ニッコウキスゲの低地変種がここだけに自生していることでも有名です。固有種ではないにしてもここだけにしかない植物があることは地元には自慢になると思われます。

付近一帯には調布飛行場などもあり、太平洋戦争以前は日本軍が使用していたようで、この浅間山にも麓の窪地などに燃料貯蔵タンクが設置され、当時の陸軍の戦闘機を隠蔽する場所としても利用されたとのこと。以前行った調布飛行場には戦闘機飛燕の掩体壕などが残されていましたが、多摩川河原の相当広い土地が軍事利用されていたことがわかります。

府中市は市民一人当たりの公園面積が都内で一番多いそうですが、確かにこの浅間山公園や近くの府中の森公園など広大な都立公園が2つもあり、併設して芸術劇場や中学校などが建っているのもそのためでしょう。私の現在住んでいる埼玉県朝霞市から東京都練馬区付近も旧日本軍の施設があり前後は占領米軍基地が存在し、現在その跡地に公共施設や公園ができているのとよく似ています。

この府中・浅間山には人見神社と浅間神社という2つの神社があります。浅間山頂上には小高い塚が造られていて(古墳だそうです)その上に浅間神社(人見浅間神社)の祠があります。浅間神社という名称や祭神が木花開耶姫命ということから考えて富士塚ともいえるのではないでしょうか。低い丘でありまがらすぐ南は多摩川の低地ですから富士山がよく見える場所です。