二見浦の中央構造線 ― 2025年05月19日 15:00
伊勢と鳥羽、松坂をまわる旅行に行ってきました。個人の旅なのでスケジュールに余裕があり、かなり気ままに歩くことができましたが、印象に残ったのは伊勢神宮前の「おはらい町」と呼ばれる参道沿いの賑わいと二見浦(ふたみがうら)の山と海の景観、松阪の落ち着いた街並みといったところ。伊勢に行くのは3回目くらいになるかと思いますが、連休後の平日だったためか、全体的に観光客も少なめで、水を張った田植え前の田圃に囲まれ、どこを歩いてもウグイスの鳴音が聞こえるような、静かな雰囲気が印象に残りました。
今回の旅行では、以前の訪問(かなり前になります)では気にもしていなかったことに関心が向いていました。ひとつは三重県のこの場所を中央構造線が通っているということで、特に伊勢神宮の下宮と二見浦海岸を結ぶ地点をを地図で見ると、山裾と海岸平野が一直線にならんでいて、まさに中央構造線の断層ラインです。中央構造線とは一億年近く前の日本列島誕生期の地殻変動で形成された大断層で、九州から四国、紀伊半島をとおり、長野県付近であのフォッサマグナとつながり、最後は群馬・埼玉県県境付近を通って茨城県の鹿島灘まで繋がっています。とりわけ明瞭なのは地図上でもはっきりわかる紀伊半島から四国を縦断している箇所です。以下の図は長野県大鹿村中央構造線博物館サイト掲載の中央構造線マップ(一部)です。
(中央構造線博物館サイトより)
昨年の夏に、ファッサマグナの大地形ということで、長野県の伊奈から新潟県糸魚川付近の大断層に由来する山々や街道(塩の道の一部)をめぐることができました。今回は、その続きではありませんが、同じくナウマン博士の発見した中央構造線のライン上に立てるのは楽しいことです。JR伊勢駅から参宮線に乗ると二見浦駅までまさに「構造線ライン」で一直線です。その先の海岸沿いの大小の岩が有名な「夫婦岩」で、神社にもなっていて各地から観光客がやってきます。この2つの岩の間から夏至の日の太陽が登るなどの、地殻変動とは関係ない自然現象の不思議さもあってパワースポットとか霊的力の場所とかいわれますが、それはそれとして、どうもこの夫婦岩は別々の岩石のようなのです。上の中央構造線博物館サイトにはこんな記述があります。
「夫婦岩の大きい方の岩や、海岸の陸側の岩は、すべて三波川変成帯の緑色片岩です。大きい方の岩と、こちら岸の岩の片理面(板を重ねたような面)の向きを見ると、同じ向きに一致しています。もとは、ひとつながりの岩だったものが、波に侵食され、海面上に頭が残ったものが夫婦岩であることがわかります。小さい方の岩は、岩種も片理面の向きもちがうので、据え直したものと思います」
確かに近づいてみると、大きい岩(夫岩?)の岩石の傾斜面は陸地側の岩と同じ傾斜角度をしていて同じ地層にあったことがわかります。三波川変成帯という地層の緑色片岩ということです。一方で小さい岩はいかにも不自然に立っている感じがします。この夫婦岩は江戸時代からの名所だったようですから、かなり古い時代に何か細工がされたのかもしれません。(夫婦岩は一直線に海に落ち込んでいる=下の写真)
なお、中央構造線の上に日本古代からの神社が並んであるのには理由があるという説があります。例えば、愛知県の「とよがわびより」の「こぼれ話」の中に
<「中央構造線」上には、高野山や伊勢神宮、豊川稲荷といった有名な神社・仏閣が点在しています。これには、
・「中央構造線」上が地形的に交通の要衝になりやすいから
・「中央構造線」での地震災害を鎮めるため
・「中央構造線」で起きた地震災害の被災者の鎮魂のため など
様々な説があるようです。
そこにもうひとつ、「中央構造線」が強力なパワースポットだからという説もあります。>
何かこうした人間の文化的な活動と地殻上の巨大運動との間に目に見えない関連があるのか──フォッサマグナによる日本の東西地域の分断の謎については意味がありそうなんですが、中央構造線による日本列島の縦の分断(外帯/内帯)はどうでしょうか。
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