大雪山の読み方は?2018年06月23日 13:54


近く北海道で大雪山系の登山を予定していますので、この山のことを少し調べていたところ、大雪の読み方は「だいせつ」か「たいせつ」かというしごく単純な疑問に遭遇しました。一応、清音(た)と濁音(だ)と表記します。確かに両方あるような気はしていましたが、山と渓谷社発行の大雪山登山ガイドブックを借りて読んでいると、その中に「大雪はだいせつと読む」という非常にはっきりしたコラムがありました。濁音が正解ということです。著者は旭川山岳会会長の速水潔という権威のある方です。

そこで、仲間にも「だいせつというのが本来の読み方らしい」と吹聴していたのですが、これも偶然にNHK放送の山岳番組を見たのですが、その中でナレーターが大雪山のことを「たいせつ」とはっきり清音で発音しているではありませんか。NHKが代表ですが、放送局はこうした固有名詞の発音や表記法には厳密なはずで多分専門の人もいるでしょう。まして、北海道を代表する地域の名をいい加減にしているとは思えません。NHKに聞くこともないと思い、ネットで調べてみると毎日放送の公式ブログ(https://www.mbs.jp/announcer2/sp/)でアナウンサーの方がまさにこの件について書いていました。結論をいうと「2通りあり、場合によって使い分ける」というものでした。なんだか釈然としませんが、現状はそのようです。引用してみます。
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「大雪山」という単体の山はありません。旭岳や黒岳などの山々を総称して「大雪山」と呼んでいます(略)ただ読み方は「だいせつざん」か「たいせつざん」かは定まっていません。ふたつの役所、環境省と国土交通省で、別々の読み方を採っているのです。もともと環境省(自然保護局国立公園課)は1934年に国立公園に指定した際に「大雪山(だいせつざん)国立公園」と名付けました。一方、国土交通省(国土地理院)は地図などで「大雪山系」と表記し、読み方は「たいせつさんけい」と「大」も「山」も清音を採っています。放送では国立公園として扱われることが多いので「だいせつざん」と濁る読み方が主流です。しかし地元では小学校の校歌でも濁らない読み方を採っていて清音が主流。どちらも間違いではありません。(毎日放送 田丸一男アナウンサーのブログ)
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確かに、環境省のホームページには「だいせつざんこくりつこうえん」と読みがふってあります。NHKも国立公園として紹介する場合には「だいせつ」と濁音で発音しているものと思います。国土地理院の地図には「読み」はないようですが、多分これで正解なのだと思います。しかし、こうなると「?」なのが最初のガイドブックのコラムです。実は、この見解は、登山ファンがよく購入する昭文社の「山と高原地図」の「大雪山」にも同じ趣旨が掲載されています。最新の2018年版にも載っています。同じ旭川山岳会会長の速水氏で、その説によると<明治32年発行の『日本名勝地誌』からだいせつであり、国立公園も国土地理院の地図も「だいせつ」としてある>ということなのです。

それではこの『日本名勝地誌』を実際に見てみるのが一番ですが、実際にあたってみると、どうもこの時から読みが2つあるような気がするのですが、どうでしょうか。幸いbooks.googleにこの原典がデジタル化されていますの、直接確認できます。以下の108ページ付近から以降です。

https://books.google.co.jp/books?id=L4lfgH9oXG0C&printsec=frontcover&hl=ja&source=gbs_ge_summary_r&cad=0#v=onepage&q&f=false

108ページに最初に出てくる大雪山には確かに同じページの「だ」という文字と比較しても「だいせつざん」と振ってあるように思えます。ところがそのすぐ後のページに出てくる大雪山の読みは「たいせつざん」に見えます。その数行前にある「た」と「だ」と比較するとそうとしか思えません。どうも、この時点で清音、濁音が定まっていなかったのではないか、というのが現在の結論です。

上の写真は2週間ほど前に行った千葉県松戸市の「20世紀の森と広場」の中の池。北総台地の湧水が江戸川低地に造った千駄堀という谷戸の地形を利用したかなり広大な自然公園です。松戸市立博物館があり、秋頃にまち歩きで訪問したいと思っています。