むさしののみささぎ2018年05月10日 10:14


武蔵野陵は「むさしののみささぎ」と読みます。「陵」とは天皇・皇后などの墓のことで、絶対敬語と同じように高貴な人の場合しか使用しない言葉ということになります。武蔵野陵は東京都下八王子市内にあり、現在は大正天皇陵、貞明皇后陵、昭和天皇陵、香淳皇后陵の4つの陵が造営されています。いってみればわずか2組の夫婦の墓なのですが、丘陵の一部を利用した広大な敷地に警備の警官や管理員が常駐し、枯葉一枚もない境内や上円下方墳形式墳墓の整った形が常に保たれています。それでも明治天皇ご夫妻の祭られている明治神宮に比べればかなり小規模ということになるのでしょう。

この武蔵野陵の存在は知っていても実際に行ったことのあるひとは意外に少ないようです。私もそのひとり。最寄り駅であるJR中央線の高尾駅は高尾山にいくためによく利用しますが、そこからいつもと反対側に10分も歩けば到着するこの御陵は、実はその正確な場所さえ知りませんでした。

今回、思いついてお参りをしてみました。JR高尾駅北口駅前の道路を少し進むと細い川があり、渡ってすぐの信号から専用の歩道が続いています。武蔵野陵正門の門前には交番のような警察の警備所がありますが、入るのも出るのもまったく自由です。平日ということもあったでしょうが、参拝(?)に訪れている人はそれほど多くありません。境内は玉砂利が敷き詰められ、参道両側にはかなりの樹齢の杉(北山杉との説明あり)が並んで植えられています。林の奥はたぶん元の丘陵の植物相が建設当時のまま続いているものと思われます。雰囲気としては明治神宮によく似ています。

周回順路としては大正天皇皇后陵続いて昭和天皇皇后陵となるようです。時代が古いせいか大正天皇陵のほうがやや土台自体が高く、全体に大きな印象を受けましたが、墳丘自体のサイズは同じかもしれません。昭和天皇皇后陵は葺石を積んだ丸い墳丘上部もよく見え、墳墓前の玉石をていねいに掃き清めている人の姿がありました。

噂では平成天皇はこのような墳墓形式の埋葬を望んでいらっしゃらないとのことで、こうした「大型古墳型」の天皇陵はこれが最後になるのかもしれません。そして、この御陵もあと1000年も経過すれば現在の多くの古墳のように緑に覆われるのでしょうか。その時、日本の社会や天皇制度はどうなっているのか。人間の乏しい想像力では過去の延長でしか未来がみえないものです。

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