『海の都の物語』を再読2017年09月18日 19:09


塩野七生著の『海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年』を再読中です。正続2巻からなるこの本の奥付を見てみると、初版発行は昭和56年(1981)で、私の購入した第13版は昭和62年(1987)です。その年に購入したとするとちょうど30年前ということになりますね。私はまだ30歳代で、忙しかったためにゆっくり読めなかったのでしょうか、<歳をとって時間ができたらもういちど読みかえしたい>と思ったのを覚えています。そういう思いをいだく書物はそう多くはありませんので記憶に残っているのです。

その30年前当時ですが、じつはその少し前に仕事がらみで初めてのヨーロッパ旅行をしていました。ただ、残念ながら歴史知識があまりなく、ただの観光旅行に終わってしまったのを悔やんでこの本に目をとめたという経緯があります。他にギリシャやパリにも行きましたが、思い出に強く残ったのは海に浮かぶ夢の様なヴェネツィアの街並みでした。現在のヴェネツィアは完全な観光地ですから歴史をしらなくても十分に楽しめますが、かつて地中海世界に君臨したこの共和国のことを知りたいという気持ちは生まれました。

『海の都の物語』を読むと、このアドレヤ海の湿地帯にどのようにして国ができ、大運河沿いのあの豪壮な建築群が生まれ、なぜそれが一千年も続いたのかがわかります。栄光のこの都市国家は18世紀には崩壊してしまいますが、これがヨーロッパの歴史なのです。これを知っていいればあの風景の見方も変わります。

著者の塩野七生さんはこのあと膨大な『ローマ人の物語』を書き上げます。そのほか彼女の著作はどれを読んでも興味深いですが、まだ若く精力的だったころに書かれたこの『海の都の物語』は、間違いなく西洋歴史文学の傑作といっていい作品です。地下に無数の松の木の杭を埋め込んだ干潟の中の都市建設、古代の攻城戦、帆船での航海、銀行の創設、共和政体の流転そしてその中の女性たち―書かれるテーマはさまざまですが、どれも本当に楽しんで読めます。読者を楽しませるように書かれているのです。これは重要です。2巻になるこの本の続編のはじめに「読書に」と題する著者の前書きがあり、その中で最後に「面白くてためになる書物が、良書なのです」というホラティウスの言葉が引用されています。

さて、上の写真はつい3年前に2回目のイタリア旅行で立ち寄ったヴェネツィアで、おなじみ運河に架かる石の橋とその下のゴンドラです。旅行にいってからこの本を読んでいるのは1回目と同じことになってしまいました。

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