「ひとり出版社」のつぶやき2017年02月10日 19:18


(上の写真は旧川越街道でみつけた巨大なウチワサボテン。内容とは関係ありません)

山岳信仰関係の文献を探していて、ある学会のリンクから岩田書院という出版社に会誌のバックナンバーを注文しました。注文品はすぐに届きましたが、その中に、この出版社の図書目録も同封されていました。

歴史、民俗、宗教などの分野の専門会社らしく、歴史論文みたいな堅い書名が数百点以上紹介されていますが、最後に『新刊ニュースの裏だより』という10ページくらいのちょっと変わった記事がおまけみたいについていました。どうやらこの出版社の編集者が出す自社のお知らせの裏に連載?しているエッセイみたいなもののようです。

これが読んでみると面白い。どうやらこの会社は「ひとり」でやっているようです。当然、協力スタッフやアルバイトはいるでしょうが、基本的に社員はひとり、社長兼平社員ということで、この形態は中小出版社にはかなり多く、俗に“ひとり出版社”といいます。つまり、このエッセイはこの「ひとり出版社」の経営者=編集者である岩田博さんののつぶやきというわけです。

専門書出版経営の難しさ、悩み、楽しみ、研究者に対する複雑な思いなどが、ベテラン編集者らしい、人柄がわかるような軽いテンポで書かれていて、関心のある人なら随所で「わかるわかる」という感じの共感をよぶ読み物です。

同社のホームページを見ると、2013年から続いているこの欄の内容が全部読めます。読者からの同社発行書籍に対する厳しくも暖かい指摘(手紙)が寄せされたという800回あたりが面白いです。代金を支払わない研究者への罵倒も痛烈です。それ以前のつぶやきを含めた、この『新刊ニュースの裏だより』をまとめた『ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏』(無明舎出版)がなんと3冊も出ているとのこと。その世界では有名人なのかもしれません。

同社のホームページの『新刊ニュースの裏だより』
http://www.iwata-shoin.co.jp/backnews/uratop.html

この岩田さんのルポがありました。2014年頃のようですが、事務所の中がすごいです。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3698